40代男性。2021年9月27日に当院を受診し、こんなふうに話した。
「1月頃からうつっぽい感じが続いています。明確に気付いたのは、1月に社内でプレゼンがあったとき。自分の発表をしているときに、急に頭が真っ白になって、言葉が出なくなりました。どうすることもできず、その場を無理やり終わらせました。その後、同じようなことがもう一度起こって「自分は明らかにおかしい」と思いました。
私はこの4年、現場のリーダーをしています。朝礼で数十人を前に話すことにも慣れています。そんな私が、急に人前で話せなくなりました。何だか始終落ち着かなくて、休憩をすることができなくなりました。会社にいるときはずっと頭がフル回転して、何かを考えています。気が休まらないので、仕方なくずっと仕事をしています。そういう私を見込んで、上司がみんなの嫌がる仕事を私に回してきたりしました。
でも、当然しんどいんです。体も心も悲鳴をあげています。ただ、休めないだけなんです。
いつも休日には釣りに行くのですが、行く気になりません。家で猫を飼っていて「こんなに可愛い生き物はいない」と思っているのですが、今は全然可愛いと思えない。家にいると何だか頭が痛くて、猫を可愛がるどころじゃないって感じです。
妻から「様子がおかしいから休んだほうがいい」と言われました。そう言われて、どこか救われたような気持になりました。自分は基本的に、与えられた仕事に対してノーと言わないようにしています。仕事を選んでいる同僚がいますが、ああいうのにはないたくないと常々思っています。だから、自分が限界だと認めることが悔しかったんです。でも、妻の言葉で吹っ切れました。上司に伝えました。「自分はもう限界です」と。それでこちらを受診しました」
体のがっしりした、生来健康そうな男性。過労がたたって心身のバランスを崩した、ということだろう。適応障害、うつ病、自律神経失調症。どの診断名にしても、外れていない。
食事内容に気を付けて、職場から離れてゆっくり静養すれば、自然と改善して、そのうち退屈でうずうずして働きたくなるだろう。診断書をお出しして休養を指示した。
10月1日、あまりにもひどい頭痛のために、予約なしに急遽来院。
「仕事を休んでいますが、ずっと頭痛がしています。24時間ずっと、です。耳鳴りもあります。1日に何度かキーンと鳴ります。
前回先生から指示されたように、食事の改善と運動を心がけています。小麦は控えめにして、にがりとかマグネシウムを多めに摂っています。症状は少しいいようですが、なぜか頭痛がひどいんです。
夜はひどい不眠で、日中に眠くなったりします。逆に妻は寝すぎで、いつまでも寝ています。
天気がいいときは散歩するようにしていますが、疲れやすいので、すぐに家に帰ります。退屈しのぎにネットをいじったりしますが、30分くらいでしんどくなる。頭痛を忘れるために釣り番組をぼんやり見て、時間を潰してる感じです」
小麦断ち、にがりの摂取、散歩の励行などを始めたにもかかわらず、頭痛が悪化した。まったく不可解だ。原因が分からない。
そこで、伝家の宝刀「困ったときのゲルマニウム」である。ゲルマニウムを1日3回、3日で2g摂取するように勧めた。
11月12日再診。
「前回もらったのを飲みだしてから、劇的によくなりました。頭痛はだいぶマシですし、夜もよく眠れるようになりました。ゲルマニウムをやめると、またしんどくなります。だから、すごく効いていると分かります。
体調がいいので、復職したいのですが、ただ、気持ち面で以前のように前向きになれなくて。なぜかな、と考えました。ネットとかでいろいろ情報を調べているうちに、電磁波のせいじゃないか、と思い当たりました。
今のマンションには3年ほど住んでいますが、ここ1年屋上でアンテナの工事をしています。私の住んでいるのは最上階で、部屋のすぐ上には、大きな電波塔があります。
ひょっとして、と思って、電磁波測定器を買いました。それで計測したところ、大当たりでした。この画像を見てください。測定器が振り切れるほどの強度です。一般家庭の100倍から1000倍のマイクロ波で、高すぎて測定不能です。
家の中でも特に、寝室が一番電磁波が高かった。最悪のところで寝ていたわけです。私も妻も、寝ても疲れがとれなかった理由がようやくわかりました。
当然、今すぐにでも引っ越したいと思いました。でも、経済的な事情で簡単にはいきません。そこで、電磁波防御グッズで対策しました。最初、電磁波遮断シートを部屋中に張り巡らせようと思いましたが、かなり高いので、簡易グッズを試すことにしました。ドイツのレヨネックス社とバイアーバイオテック社のを買ったところ、確かに効果を実感しました。使い始めて翌日から睡眠の質が明らかに変わりました。私ら二人とも口内炎があったのですが、それがすっかり消えました。
今になって分かるのですが、ここに住み始めてから変な症状が続発していました。私の体、分かっているだけで鼠径部など8か所に腫瘍があります。病院で組織を採って診てもらうと、血管脂肪腫(angiolipoma)だと言われました。あと、飛蚊症だとも言われています。妻は顎が痛いって言っています。
先生の勧めてくれたことは、どれも効いたと思いますよ。ゲルマニウムもマグネシウムも、食事改善も運動も、どれも確かによかった。でも、残念ながら完治には至らなかった。根本的な原因が電磁波だったからだと思います。
CMCって知ってます?カーボンマイクロコイルっていう電磁波対策グッズのひとつですけど、このネックレスをして1分で頭痛がなくなりました。誇張でも何でもありません。あのしつこい頭痛が、本当に1分でなくなったんです。信じられない思いでしたよ」
上記は、僕が患者を治癒に導いたというよりも、患者が僕に病気の何たるかを教えてくれたケースである。
臨床現場でうつ病が疑われる患者がいるとして、その発症機転に電磁波が関与していることを指摘できる医者がどれぐらいいるだろう。ほぼ皆無に等しいと思う。
しかし、電磁波曝露によってうつ病になる。これはれっきとした医学的事実だ。たとえば以下のような研究。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30547710/
患者自身が電磁波の可能性に気付いたからよかったものの、そうじゃなければ、完治にまでは至らなかっただろう。食生活の改善、運動、マグネシウムやゲルマニウムなど、僕の指導で行けるのは、せいぜい“それなりにいい線”までである。ゲルマニウムによる血液浄化作用やマグネシウムによる交感神経の緊張緩和作用などにより、それなりに治ってしまうわけだ。
しかし、根本的な原因を放置したままでは、完治はあり得ない。
僕がこれまで診てきた患者のなかにも、電磁波曝露が背景にあった人はきっといたに違いない。患者が「完治はしてないけど、以前の症状を思うと随分よくなったし、まぁ満足です」という感じだと、僕の方でも、これでよし、としてしまったりする。
今後、5Gの本格的な展開に伴って、上記のような患者は激増すると踏んでいる。うつ病、不眠などの原因を鑑別する際には、電磁波曝露の有無を必ず聞くようにしよう。