【症例】77歳男性
【主訴】前立腺癌末期(stage D)
2021年1月末受診。患者本人は来院できず、代わりに娘さんが来て話をされた。
「3年前に前立腺癌と診断されました。手術、放射線、抗癌剤などできることはすべてやりましたが、治療の甲斐なく現在終末期です。骨転移があり全身の痛みもひどいです。
3年前に手術しましたが、膀胱のほうにある腫瘍をとりきれなかったとのことで放射線治療を受けました。さらに抗癌剤も2年間続けましたが、最終的に体力が持たず、去年の夏には抗癌剤をやめました。すると前立腺癌のマーカーのPSA値が急激に上がって医者からは「年内もたない」と言われていました。
入院して抗癌剤治療を受けていたのですが、今は在宅療養です。医者の予想に反し年内は比較的元気に過ごせていたのですが、年が明けてここ1か月で急激に弱ってきて。
採血では、ひどい貧血があって内臓関係のマーカーも悪化しています。ここ2、3週間は自宅のベッドで横になっています。貧血のせいで、立ち上がると息が上がって、トイレにいったん座るとまた立ち上がるのもきつい有り様です。
往診の医者からは「輸血が必要」と言われています。「来週には返事して」と。
私としては迷っています。輸血となれば訪問診療では無理で、また入院になります。それとも、輸血を受けずに家でこのまま様子を見るか。
貧血さえ改善すれば輸血の必要もなくなり家で過ごせます。この貧血を何とかする方法はないでしょうか?」
確かに、末期である。ご家族としても多くは求めていない。ただ、最後の日々を家で穏やかに過ごして欲しい、という思いである。
しかしお薬手帳を見て、何とも悲しい気持ちになった。降圧薬、抗糖尿病薬、ステロイド、スタチン、鎮痛薬。末期でもこんなにたくさんの薬を飲まないといけないものか。
「糖尿病は抗癌剤の副作用で発症しました。そこにステロイドを使ったことで血糖値がさらに悪化して、それで糖尿病の薬を使うことになって。これでも薬はずいぶん減らしてもらったほうです」
こういうのは、医療の形をとった殺人だと思っている。医者の言うがまま医療のなすがままに流されると、こうなっていく。
そう、僕の仕事は、医療がもたらしたダメージを極力緩和することである。
貧血の解消にはゲルマニウムを勧めたい。息切れは酸素不足が原因だが、ゲルマニウムは服用後すぐに組織中で酸素を発生させる(『本多藤嶋効果』)。さらに中長期的には、赤血球の代謝を促進することで末梢の酸欠を解消する。癌性疼痛を抑える助けにもなるだろう。
その他、抗癌作用のあるサプリを数種類勧めた。
2021年2月19日再診。やはり、娘さんのみ来院。
「先日亡くなりました。誤嚥性肺炎です。
その日、朝は普通でした。昼頃咳き込んでる様子を見て、危ないと思って在宅医療の先生を呼びました。そしたら先生が来られるまでに、自分で咳して嘔吐して、それで普通に戻ったんですね。それから先生が来ました。
簡易の血液検査をしたり聴診器で呼吸音を確認して「特に問題ない」と。それで先生が帰りました。でもその後に水を飲んで、それでまた咳き込んで。先生をもう一回呼んだけど、今度は2時間半くらい来なくて、その間に亡くなりました」
僕は黙って娘さんの話を聞いていた。こういう話は初めてである。患者の代理で来た家族が「その当の患者が亡くなった」と言いに来ている。ただ、話の口ぶりから、「父を救ってくれなかったな!」と僕に対して怒っているわけではないことは分かる。ただ娘さんは、起こったことを淡々と説明している。
「そう、亡くなったことは残念でしたが、最後にやった簡易採血の結果を見て、私、驚きました。ヘモグロビンが8.3に上がっていたんです。以前は6くらいしかなかったのが、8になってて。そのことを在宅の先生に指摘すると、「こんなことはあり得ない」って言ってました。「何かのミスだろう」って。私は絶対ゲルマニウムの効果だと思うんです。
ゲルマニウムを飲んだのは、たった数日のことです。でもその数日で、父の症状が全体的に落ち着きました。「何か息苦しさがだいぶ楽になってきた」って父もはっきり言っていました。トイレに行くぐらいは当たり前にできるようになったし、しゃべっていて息切れするなんてことがなくなりました。弟や家族ともラインをするぐらい元気になりました。光を見た思いでした。「このまま元気になっていくかもしれない」と思いました。
ヘモグロビンが8に上がっていることを父に伝えました。「これだと輸血しなくても済みそうだよ」って。そう、亡くなる直前まで、父と普通に会話できてたんです。
癌で死んだ、って感じじゃないんです。安らかに亡くなりました。
私、今日は先生にお礼を言いにここに来たんです。ゲルマニウムのおかげで、父との最期の時間を穏やかに過ごすことができました」
そうですか。それはよかった。いや、よかった、と言っていいのかな。しかし最期をその人らしく過ごす助けになれたとすれば、よかった。
ちょうどこの日、浅井ゲルマニウム研究所の中村宜司さんが当院に来られた(関西に出張で来られたときは僕のところに立ち寄られ晩御飯などをご一緒する)。それで上記の患者のことを伝えた。中村さんいわく、
「ヘモグロビンが数日の短期間で6から8に増えた。それが一般的な経過であるかどうかは分かりません。ただ、酸欠による呼吸困難感を解消する作用は確かにあります。
それと、癌などでターミナルの人がゲルマニウムを服用し、その目覚ましい効果を目の当たりにすることで、患者のご家族がゲルマニウムのファンになることはよくあります。患者がどれほどつらいか、家族は間近にそれを見ているものだし、ゲルマニウムの劇的な力も、同時に見ているものだからです。
この患者さんも、もっと早く先生のところに行っておられたら、違う結果になっていたかもしれません。
ただ、人間は”いかに生きるか”だけではありません。人生の終わりをどう迎えるか、というのも大切です。亡くなる本人にとってもですが、それ以上に、最期を看取る家族にとって」