前回に続き、講演会で話した内容をざっと紹介しよう。
『ゲルマニウムと私』(浅井一彦著)に、ルルドの泉についての記載がある。
ルルドはフランスとスペインの国境に位置する小さな村だが、“ルルドの奇跡の水”で有名である。当地に産出する湧き水があらゆる病気を治すと言われている。病気平癒を願って年間300万人がルルドを訪れる。
アレクシス・カレル(1873~1944)という若い外科医がいた。幼少期から神童の名声高く、リヨン大学医学部を優秀な成績で卒業した。研究室でも画期的な論文を量産し、30歳の若さで教授になった。1912年には血管縫合、臓器移植に関する研究でノーベル賞を受賞した。
1902年29歳の若き俊才カレルは、ルルドの話を聞き嘲笑した。
「20世紀の今日、奇跡などというものは存在しない。いわゆる“ルルドの奇跡”は、集団的な祈祷によって暗示にかかっただけのこと。要するに、単なるヒステリーだ。俺がルルドに直接出向いて非科学的な虚偽をあばいてやる」
ルルド行きの汽車に乗ると、近くに若い女性(マリー・バイイ)が横たわっていた。結核性腹膜炎の第3期。医者から見放された患者だった。
「診察している間にも死ぬんじゃないかと思ったよ。あのぐらい重症の患者が治るなら、俺もさすがに奇跡を信じるよ」カレルは同行の友人に笑いながら言った。
汽車は8時間かけてルルドに到着した。
マリーの家族が彼女の体をルルドの泉で拭いてやると、瀕死の患者の蒼ざめた顔に血の気がさしてきた。腹膜炎で異常に膨れていた腹部が少しずつ小さくなっている。
カレルは思わずマリーの手首をとった。脈が正常化していた。万年筆を取り出し時間を書き付けた。2時40分。
3時には病人の治癒は決定的になった。「私は治りました」とマリーは宣言した。痛みも腫脹も消失していた。
4時。健康な常人とまったく変わらない体になった(その後マリーは修道士となり病人の世話に一生を捧げた)。
その夜、カレルは詳細にマリーの体を調べ、所見をノートに記録した。瀕死の状態から見事な健康体になっていた。疑うことはできない。奇跡だった。カレルはこの事実を前にして、脱帽せざるを得なかった。
この話は『人間この未知なるもの』(アレクシス・カレル著)の一節である。これを読んだ浅井一彦(有機ゲルマニウムの合成に世界で初めて成功した研究者)は強い感銘を受けた。しかし同時に、科学者でもある浅井は、このエピソードを「奇跡」というカテゴリーにしまい込んで、そのまま思考停止することを潔しとしなかった。「この“奇跡”は、ルルドの泉に含まれる何らかの成分によるものだろう。そしてその成分はゲルマニウムではないか」
浅井はドイツ人の妻をルルドに派遣し、ルルドの水を入手した。これを原子吸光器にかけた。浅井は快哉を叫んだ。分析チャートには、見事なゲルマニウム線が描かれていた。
ここに着想を得て、浅井は日本国内に“ルルドの泉”があるかどうかを調査しようと考えた。飲んで病気が治ったとか、いわゆる霊験あらたかな水は日本各地にあるものである。
青森県東津軽郡に“山吹のおみず”と呼ばれる湧き水がある。地元では難病治癒のご利益があると言われている。そこの水を瓶にいれて持ち帰り、原子吸光器にかけたところ、思った通りの結果がでた。ルルドの水の場合と同じように、明らかにゲルマニウム線が現れた。
カレルの“不死身のチキンハート”(immortal chicken heart)。これはカレルがノーベル賞をとるきっかけになった研究のひとつである。
鶏の寿命は平均7年。しかしカレルは、水とミネラルを与える閉鎖的な環境で、心臓細胞の培養に成功し、それを34年間生かせ続けた(カレルの死亡に伴って世話をする人がいなくなりこの心臓も死んだ)。
カレルはこんな言葉を残している。「細胞は不死身である。細胞が浮遊する液体が腐るだけである。この液体をときどき取り替え、細胞に栄養を与えてやれば、命の鼓動は永遠に続く」
結論からいうと、カレルは間違っていた。細胞の分裂回数はテロメアが規定しており上限がある(ヘイフリック限界)。つまり、細胞の命は永遠ではない。
しかしカレルの主張は、本質的なところでは、全然間違っていないと思う。「細胞が浮かぶ液体がダメになると、細胞自体も死んでしまう」何も間違っていない。供給する水こそが、細胞の生命線なんだ。
腐った水、たとえば電子レンジで加熱しその後冷ました水を植物に与えると、植物はことごとく枯れてしまう。
対照実験として、ストーブで沸騰させその後冷ました水を用意する。
それぞれの水に植物の枝を入れ、1週間後観察すると、以下のようになる。
地植えの植物でも同じである。
毎日それぞれの植物に、電子レンジ冷まし水、ストーブ冷まし水を与え、成長を記録すると、電子レンジ冷まし水を与えた植物は9日目に枯れてしまった。
小学生が自由研究でやるのにうってつけのテーマだろう。誰にでも検証可能な簡単な実験でありながら、その意味するところは強烈である。つまり、水は電子レンジによる加熱で「腐る」ということだ。
イギリスで猫を使った研究がある。猫に電子レンジを使って調理したもの(水も含め)のみを食べさせたところ、全匹1か月以内に餓死した(ヘンデル博士、フェレイラ博士の実験)。
加熱、という外形だけに目を向けてはいけない。炎による加熱は数十万年前からあった。何らかの熱源があり、そこから熱力学の法則によってじわじわと周囲に熱が伝播する現象である。一方、電子レンジによる加熱は、発明からまだ100年も経っていない。1秒間に24億5千万回振動するマイクロ波を照射することで、対象物の内部にある水分子を揺さぶる。これにより分子同士に激しい摩擦が起こり温度が上がる。
なるほど、対象物の温度が上がった、という点だけを見ると、火で温めようが電子レンジで温めようがどちらも同じように見える。しかし、マイクロ波による加熱は分子に異変を起こし、自然界に存在しない構造異性体が生じることになる。
テフロン加工のフライパンを使うことも、水を劣化させる。テフロン加工にはPFOA(ペルフルオロオクタン酸)が含まれている。PFOAの分子構造を見るといい。これでもかとばかりに大量のフッ素がついている。
PFOAは動物実験で発癌性(直腸癌、腎臓癌、精巣癌)、高コレステロール、早発閉経などを引き起こすことが確認されている。しかしテフロン加工のフライパンの販売が規制されたという話は聞いたことがない。
このPFOA、テフロン加工さえ避ければ大丈夫かと思いきや、全然そうではない。2020年6月環境省が水質調査の結果を発表した。全国13都府県の37地点でPFOA、PFOSが国の暫定基準値を超えて検出された。
なぜ、どのように環境中に広がったのか、分からない。テフロンの加工工場から飛散したのか、あるいはケムトレイルによる拡散か、分からない。ただ、PFOAという発癌物質がすでに我々の身近にあることが明らかになった。
イーテックの簡易浄水器(ウルオ)は、このPFOAに対してもろ過機能を発揮する。
「新規の毒性物質も除去しちゃうってすごくないですか?」と小野さんに言うと、息子を褒められたお父さんのように笑顔で謙遜して、「いや、ウルオがすごいというか、活性炭がすごいんです。特にPFOA特異的に除去したわけではなくて、活性炭は何でも吸着するんです」