2019年11月

2019年11月

有機ゲルマニウムと美肌

2019.11.14

医者の仕事は、ざっと三通りに大別できる。臨床、研究、教育の三つだ。
『臨床』はベッドサイドあるいは診察室で患者を相手にする仕事。普通、特にことわりなく医者というときは、臨床医のことを指す。
細胞や動物を使っていろんな実験をしたり、というのは『研究』で、新しい医学的知見は多くの場合、ここから生み出されている。
『教育』は医学生や研修医、看護学生、ときには他学部の学生などに医学知識を教える仕事。

医者は、子供のときからそれなりに勉強して厳しい受験倍率をくぐり抜けてきているせいか、そもそも勉強することが苦じゃない人が多いんだ。
学ぶことが好き、というのは、医者にとって必須の素質だ。いや、正確には、学生のときに身につけたような大昔の知識でもやっていけないことはないんだけど、インターネットがあって医学的知識が医者の独占物じゃなくなった今の時代、勉強しない医者は患者に見放される可能性が高い。患者に見放されたって、勤務医なら問題なく生活していけるだろう。しかし古い知識でやっている開業医は、相当しんどい時代が来るような気がする。
医学の進歩とともに知識のアップデートが常に必要だから、医者は一生勉強なんよ^^;
そういう職業柄のせいか、人にものを教えるのが好き、という医者も多いと思う。
To teach is to learn.教えることと学ぶことは反対語のようでいて、実は同義語なんだ。こういう医者は大学病院に向いている。

僕は本来、性格的には大学病院向きだと思う。教えることが好きだし、黙々と試行錯誤する研究畑にも憧れる。
臨床現場は目の前の患者と一対一の真剣勝負で、やりがいはもちろんある。でも、そういうふうに一人一人の患者と向き合い治療に当たっても、僕個人ができることは限られている。それよりは、研究に従事して、何か画期的な方法論を編み出すほうが、多くの人を救えるのではないか。たとえば、ホッファーは臨床医であると同時に研究者でもあって、治験を通じてナイアシンの様々な有効性を発見した。彼の功績がどれほど多くの病める人を救ったことか。
しかし、教えることが好きといっても、今の医学部教育で行われているような、患者を救えない知識、それどころか有害無益な知識を広めることになんて、加担したくない。
研究がやりたいといっても、製薬会社の利益に貢献するだけの研究しかできないのなら、そんなのはごめんだ。
教育にせよ研究にせよ、本当に患者のためになることがしたい。

先日、浅井ゲルマニウム研究所の中村宜司さんの研究チームが、また新たな論文を出された。そう、僕がやりたいのは、こういう研究なんだ。
その新たな知見を世に提出することで、ひとつ、世の中が明るくなる。圧倒的な情報の洪水のなか、それはごくささやかな情報のひとつでしかないけれど、それでも、そのひとつ分だけ、世界がよくなる。
今から研究の道に進むのは難しいけど、せめて、そういう情報発信者ではありたいと思うんだな。

『有機ゲルマニウム化合物THGPはメラニン合成を抑制する』
https://www.mdpi.com/1422-0067/20/19/4785
有機ゲルマニウム化合物3-(三水酸化ゲルミル)プロパン酸(THGP)には様々な生物学的活性がある。以前我々は、THGPがcis-diol構造と複合体を形成することを報告した。L-3,4-二水酸化フェニルアラニン(L-DOPA;メラニンの前駆体)は自身のカテコール骨格のなかにcis-diol 構造を含んでおり、過剰なメラニン産生によって皮膚の黒ずみやシミが生じる。そのため、化粧品業界ではメラニン産生を抑制する物質の研究が精力的行われている。
本研究で我々は、キノコチロシナーゼ(チロシン分解酵素)とB16 4A5メラノーマ細胞を用いて、THGPがL-DOPAとの複合体形成を通じてメラニン合成を抑制するかどうかを調べた。
THGPがL-DOPAに作用する能力を1H-NMRによって分析し、THGP(およびコウジ酸)のメラニン合成に対する影響を調べた。
さらに、THGPの細胞毒性、チロシナーゼ活性、遺伝子発現に対する影響も調べた。
その結果、THGPはL-DOPA(cis-diol構造を持つメラニン前駆体)に作用していることがわかった。
さらに、THGPはメラニン合成を抑制し、コウジ酸と相乗作用すること、しかもチロシナーゼ活性や遺伝子発現には影響しないこともわかった。
これらの結果は、THGPがメラニン合成を阻害する有用な基質であること、また、THGPの効果はコウジ酸との併用で増強されることを示している。

一般の医学部教育でも、
フェニルアラニン→チロシン→L-DOPA→ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリン
という代謝経路は学ぶ。
栄養療法を学んでいる人なら、このカスケードを見れば、ホッファーの功績を思い出す。つまり、「ドーパノクロムやアドレノクロム(ドーパミンやアドレナリンの酸化物)には催幻覚性があって、統合失調症の幻覚・妄想はこれらの物質の作用である。また、これらには細胞分裂抑制作用があるため、統合失調症患者はめったに癌にならない。ドーパミンやアドレナリンの酸化を防ぐために、ビタミンCを摂りましょう」
そういう文脈でこの代謝経路を見ることはあるけど、L-DOPAがシミの原因でウンヌン、という話はどちらかというと美容系の話で、僕にはなじみが薄いので、この論文は新鮮だった。
コウジ酸と有機ゲルマニウムの併用によって、L-DOPAの悪影響をブロックできるのなら、両者は美肌のためのみならず、統合失調症にも有効ではないか。
僕が研究者なら、こんなふうに、検証してみたい仮説はたくさんあるんだけどなぁ。

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