かつては陰謀論だと言われたが、いまやトランプ大統領とケネディ厚生長官がメディアの前でこれを認めている。
https://note.com/nakamuraclinic/n/n25cb62878d8c
しかし、「ワクチンを打たなければ自閉症にならない」かというと、決してそんなことはない。

3歳男児。1歳半健診で自閉症と診断された。言葉が遅く、3歳になっても「パパ」「ママ」「わんわん」「いや」などの単語でしか話せない。癇癪持ちで、思い通りに行かないと感情を爆発させる。音に過敏で、不安感が強い。
しかし、お母さんは強い口調で断言した。「ワクチンが原因で自閉症になるって聞きますけど、うちはワクチンは1本も打っていません」
帝王切開で出産。母乳が吸えなかったのでミルク育児。自閉症のリスク因子ではあるが、それだけで自閉症になるわけではない。
「妊娠中にワクチンを打ったり、小さいときに解熱薬を使ったことはないですか」
「一度発熱したことがあって、小児科で出された抗生剤を使ったことはあるけど、解熱薬は使っていません。関係あるかどうかわからないけど、妊娠前から妊娠中もずっとプロテインは欠かさず飲んでいました。体にいいっていうので」
プロテインの原材料を見てみる。たとえば、こんな感じ。

アスパルテーム、フェニルアラニン化合物、スクラロースなどの人工甘味料。
ふむ、どうもこのあたりが怪しそうだ。

妊娠中にアスパルテーム(1日177㎎=ダイエットソーダ1本分)に曝露されると、男児では自閉症のオッズ比が3倍に増加した。

ネズミの実験で、妊娠中の人工甘味料への曝露が、出生後子ネズミの行動変化が示されている。
仮にお母さんが、「いや、人工甘味料不使用のオーガニックプロテインだった」と言ったとしても、オーガニックにはオーガニックなりのリスクがありますよ。

「オーガニックのプロテインパウダーは、非オーガニック製品に比べて、鉛が3倍、カドミウムは2倍多かった」
さらに、チョコレート味のプロテインが最悪で、「バニラ味に比べて鉛が4倍、カドミウムが110倍多かった」とのこと。
人工甘味料が含まれていないとしても、代わりに重金属がたっぷり含まれているのなら、どっちもどっち、ということになる。
プロテインなんて飲まずに、普通に肉食ってればいいんだよ。
とにかく、原因がワクチンであれ何であれ、自閉症にはまず、ゲルマニウムである。

「飲みだして翌日から効果を感じた」という、この即効性がいい。本人を常日頃そばで見ているご両親にとって、この即効性が何より説得力を持つ。
自閉症と便秘はワンセットのことが多い。『腸脳相関』という言葉があるように、精神神経系疾患と腸の炎症は別ものではないから。自閉症の改善の背景には腸内環境の改善があるものだし、逆もしかり。
癇癪の半分は、症状というよりは、言いたいことを表現できないストレスに起因するものだから、言葉が話せるようになれば自然と消えていくだろう。

5歳男児。診察中、何の脈絡もなくいきなり笑い出した。
お父さんが説明する。「こんな感じです。何がおもしろいのか、急にゲラゲラ笑い出します。笑いの意味が分からないので、まわりの人は戸惑います」
自閉症児の不適切な笑い(inappropriate laughter)というのは、典型症状です。

ある状況がある。たとえば叱責「こんなことしちゃダメでしょ!」
すると、ある感情が生まれる。「怖い」、「悲しい」、「イライラ」
次に、その感情を表現する。神妙な顔で「ごめんなさい」、いたずら顔で「嫌だよ!」
健常児は、この、状況→感情→表現、の流れに一貫性がありますが、自閉症児にはこれが難しい。
神妙な、ショボンとした表情が求められる場面で、ちゃんと「ショボン」とするのは、ある種、役者にならなくてはいけません。けっこう高度な技術を求められているわけです。
もうひとつ手前、状況の把握の段階でつまづいている可能性もあります。

叱責された場面でも、その場面の意味が分からない。「何かいつもと違う状況だな」ぐらいは分かる。それで、笑ったりする。
あるいは、「こんなことしちゃダメでしょ!」の声を聞いて、その音の響き、言葉のリズムから、何かを連想して笑っている可能性もある。
こういうのは、自閉症者本人に聞けばいい。成人した自閉症者たちが、掲示板にこんな投稿をしている。

「緊張すると笑ってしまう」「頭の中の連想で笑ってる」「相手をバカにしてるわけではないんだよ」
ある研究で、自閉症者の「笑いのツボ」は健常者と違うことが分かっている。

つまらないバラエティ番組なんかで、編集で観客の笑い声を「たす」ことがある。すると視聴者は「今の場面は笑うところなんだな」と分かって、笑う。呼び水としての笑い、を添加することで、実際の笑いを引き出すわけです。
しかし、上記研究によると、自閉症者に対してこの種の試みは効かない。「自閉症者は他者の笑いに加わろうとする試みが稀だ」。
また、自閉症者は愛想笑いが分からないという研究もある。

さて、やはり、自閉症にはまず、ゲルマニウムです。

1か月後の再診時、「妙な笑いがなくなった」との報告。多動による衝動性など、まだまだ改善すべき症状はあるものの、服用開始からわずか1か月でひとつの症状が消失したことは、それなりの成果だと言えます。

7歳の娘の自閉症のことで、来院されたお母さんが、こんなことを言う。
「なぜかしゃべるとき、敬語が多い。特に大人と話すときは必ず敬語です。あと、私も他の家族も関西弁なのに、この子は標準語を話します」
生まれも育ちも関西で、両親も兄弟もバリバリの関西弁。それなのに、本人だけは標準語を話す。
これは自閉症に典型的に見られる特徴です。逆に、自閉症の症状が改善し始めると、言葉に方言が混じり始めるという現象も確認されています。つまり、方言使用の頻度が、自閉症の重症度を評価する目安になるということです。これについては以前の記事で触れたことがある。
『方言と自閉症』
https://note.com/nakamuraclinic/n/nf789f11dc436
自閉症者は方言を話さない
この現象は医学的にも言語学的にも大変興味深いものですが、最初に主張したのはある日本人研究者でした。いや、正確には、その奥さんです。心理士として乳幼児健診で多くの自閉症児を見た経験から、奥さんは夫に言います。「今日の健診で見た自閉症児も津軽弁を話さなかった。母親はバリバリの津軽弁なのに」博士号を持ち、大学で教鞭をとる夫は、この一言に反発した。「自閉症だから津軽弁を話さないっていうのは、ひどい偏見だな」奥さんも黙っていない。「現場では常識だよ。自閉症の子は津軽弁を話さなくて、標準語を話すのは」言い争っても仕方ない。夫は「じゃ、ちゃんと調べてやる」
ここから、「そもそも方言とは何なのか」、「乳幼児はどのように言葉を習得していくのか」、「自閉症児の言語習得は健常児とどのように違うのか」など、言語学の根本テーマに大きな一石を投じる研究につながりました。

自閉症者はなぜ標準語を話すのか。
【方言の社会機能説】そもそも人は、相手との心理的距離によって言葉を使い分けています。方言のある社会では、親しい人には方言を、見知らぬ人には標準語を使います。こういう使い分けは、人との心理的距離を理解しにくい自閉症児にとっては、ものすごくめんどくさいのです。だから彼らは、一律に標準語を使います。
【メディアからの言語習得説】健常児は、相手の表情、視線、声、身振りなどから会話を学びますが、自閉症児はそういうのが苦手です。代わりに、自分が興味を持つメディアコンテンツで言葉を学びます。
おもしろいのは、これが日本だけの現象ではないことです。
アイスランドでは、日常の話し言葉はアイスランド語ですが、テレビなどのメディアは英語がメインです。アイスランドの自閉症児は、英語を好んで話します。
アラビア語圏では、日常会話では口語アラビア語が話されますが、テレビでは現代標準アラビア語(本来学校で学ぶもの)が話されます。アラビア語圏の自閉症児は、未就学児には難しい現代標準アラビア語を話します。
アイスランド、アラビア、津軽に共通するのは、日常の話している言葉とメディア優位な言葉にズレがあることです。このような地域では、自閉症児はメディア優位の言語を使います。
では、そもそも方言のない地域では、自閉症児はどのように話すのか?
敬語(あるいは丁寧語)を話します。相手を敬して遠ざけて、なんとか心理的距離を保ちたいのです。
子供から敬語とか丁寧語でしゃべられたご両親は、ショックを受けるでしょう。あるいは、津軽弁で育てた我が子が標準語でしか話してくれないとなれば、お母さんとしては寂しいでしょう。でもそれが自閉症の特性なのだと理解することで、そのショックも多少は緩和されると思います。

標準語を話す自閉症児のなかには、自閉症の症状改善(他者への興味関心の芽生え、他者との親密度の深まり、社会的スキルの向上)とともに、方言を話すようになる人がいました。
つまり、「自閉症者=方言を話さない」という現象は固定されたものではないということです。
この現象(方言使用の頻度と自閉症の重症度の逆相関)は、自閉症のスクリーニングやAQ(自閉症スコア)を判断する一助に使える可能性があります。


